[ 2F ] 70th anniversary【Licht Bestreben】

2020年10月3日

私どもKAWANOは1950年の創業以来、多くのお客様に支えられて70周年の節目を迎えることができました。
皆様への感謝を形にしたく、特別な企画をご用意しました。

その一環として、企画にご協力いただいたデザイナー様にQ&A形式でデザイナーズレターを依頼いたしました。
70周年企画イベント毎に順次ご紹介いたします。

KAWANO 2Fの二番バッターは【Licht Bestreben】デザイナーの加藤氏です。

licht

Licht Bestreben designer:加藤 弘大 (カトウ コウタ)

・ファッションはどのように社会に役に立つと思いますか

今の時代、ファッションに求められる要素として大きく分けて二つあると感じています。
一つはアイデンティティとしての役割です。
人間社会において衣類は切っても切れない関係ですが、その中でもファッションの果たす役割、ファッションの持つ魅力は、個性を表現できることだと思います。
“粧は情を写す鏡である”と私は考え、社会においてあなたがあなたらしくあることで、あなたに関わるすべての人にあなたならではの魅力を伝えることができるのではないでしょうか。
それはきっと人生をより豊かにしてくれることかと思います。
もう一つはエンターテイメントとしての役割です。
どうでしょう、今流行のyoutuberやアーティストならびに芸能人などが、みんな同じファッションに身を包んでいたら、そこに魅力を感じますか?私はそうは思いません。
ファッションを含めたアイデンティティにこそ人は心惹かれ、魅了されるのだと思います。
SNSなどが発達した現代において、あなたを楽しませてくれるそのコンテンツの中の重要な役割を、ファッションは担っています。
一つ目のアイデンティティとしての役割で求められる“自分自身が着飾る楽しみ”と同じく、“見ているヒトを楽しませる”ことができるのがファッションの魅力です。
Licht Bestrebenは服としての機能性や品質だけでなく、着る人の個性を引き立て、見る人をワクワクさせる、そんなクリエーションこそ使命と感じ、今後も追求していきます。

・デザイナーを志したのはいつですか、きっかけも教えてください

服作りを始めた最初のきっかけは、祖母がデザイナー兼パターンナーであり、私の実家から近くの祖父母家にアトリエがあったことです。
母子家庭で育ったこともあり祖父母家で過ごす時間が多かった影響か、老後も裁縫を趣味にしている祖母の姿を見ながら育ちました。
とはいえ、最初は簡単なパターン作成や縫手順を教えてもらいながら、“こんなのあったらいいのにな” と思う服や
“あのブランドのあの服を買いたいけど高くて買えないから自分で似たやつを作ろう”  程度でした。
しかし残念ながら私は手先が不器用で、しかもめんどくさがりやなので、デザインを考えている時は楽しいのですが、パターンや縫製の作業は不得意でしたしあまり好きじゃありませんでした。
優しい祖母からも“あなたは細かい作業に向いていない”と言われてしまうほどでしたね。笑
それもあって服作りは趣味程度でしたし、専門学校に行く熱量もなかったので、将来はバイヤーになって自分の好きな商品を並べたセレクトショップを作りたいという思いから英語を学ぶために外国語大学に進学しました。
地元大阪のアパレル企業に就職して、当初は店頭で販売やVMDを担当していましたが、ありがたいことにその企業のオリジナルブランドのデザイン担当に入社間も無く抜擢していただき、仕事としてデザインをさせてもらえることとなりました。
入社面接の時に祖母のアトリエでの経験をアピールしたことが偶然生きてきた感じですね。笑
こんな偶然から始まったことですが、機会をいただいたオリジナルブランドのデザインや生産管理が他の何よりも楽しく、自分はデザイナーになりたいのかもしれないと気付いたのがきっかけです。
初めてローンチした商品が非常に好評だったことも自信になりました。
そこからは大変ありがたく様々な人が手を差し伸べてくださり、徐々にですがデザイナーとして独立していく道が開けていき、今に至ります。

・その当時はどのようなファッションが流行っていましたか

エディー・スリマンのスキニーとかヒールブーツが流行っていたのがその頃だと記憶しています。
アントワープ6もかなりフューチャーされていて、デザイナーズブランドも全盛期という感じでしょうか。
エディーのDiorや、Rick OwensやAnn Demeulemeesterなどのエッジの効いたブラックカラー主体のモードブランドと、UNDERCOVERなどのストリート感あるブランド、どちらも共存していた感じでした。
個人的にはヒールブーツやドレープデザインのトップスなど、エッジの効きすぎたデザインは好みではなかったので、スキニーにボリュームスニーカーやビッグサイズのトップスをよく合わせていたのが12〜3年前です。
最近はかなりストリートカルチャーがフューチャーされてますが、その当時から好みの変わってない私としては自分の好きなものが増えて嬉しく思っています。
私自身は有名なブランドよりもコアなブランドを探すことに楽しみを感じていたので、当時よく買っていたのはKIM JONES。彼自身のブランドがなくなる最後のシーズン、受注会でオーダーしていた商品が生産中止になってとても悲しかったのを覚えています。
「Dunhillのクリエイティブディレクターになるんだって〜」と、ショップ店員さんから教えてもらった当時、彼が10年後まさかこんなすごいことになるとは思いもしませんでした。笑
余談ですが、その当時好きだったブランドの一つにBernhard Willhelmというブランドがあり、読めそうで読めないこの長々としたブランドネーム(デザイナーの本名)がイケてるなーと思っていて、もし自分のブランドを設立したら長くて読みにくいブランドネームにしよう!と考えていたのが、Licht Bestrebenの由来の一つでもあります。

・KAWANOが70周年を迎えるにあたり、制作していただいた企画や商品に込めた思いを教えてください

この度は70周年誠におめでとうございます。
KAWANOさんのように長きにわたってファッションシーンの変遷を見続けてこられ、その中心でご活躍されているショップ様にお取り扱いいただき、また今回このような企画に参加させていただけることを大変光栄に存じます。
今回メインショーウィンドーにて弊ブランドのPRをお願いできるとのことで、設立から僅か5年の若輩者ではありますが、今持っているものを全力で出し切って、ブランドの魅力を発信するだけでなく、KAWANOさんにご来店されるお客様に感動と発見をご提供できるよう、僭越ではございますがLicht Bestrebenらしい企画と商品を追求しました。
ウィンドーでは今シーズンのテーマをより具現化できるように、トルソーでの表現やオリジナルファブリックの持ち込みをお願いさせていただきました。
インラインアイテムにも使用しているオリジナルグラフィックやオリジナルフォントを、カッティングシートでご演出いただくことで、コンセプチュアルなウィンドーに仕上がったかと思います。
また、Licht Bestrebenが展示会や自社ショールームなどで演出したい世界観をショーウィンドーを通してお客様にもお楽しみいただきたいという思いから、弊社オリジナルのステンレス什器やサインボード、アクリル素材のファーニチャーなどをご用意させていただきました。
最後に、ノベルティに関しても一切妥協のない良質かつ唯一無二のプレゼントとしたく、資材はすべてインラインアイテムにも使用しているブランドオリジナルファブリックを採用しました。
ブランドロゴをエンボス加工している本革のパーツもこのノベルティの為に制作しております。
ご来店いただきましたお客様には、より刺激的で楽しみに満ちたひと時をお過ごしいただければ幸いです。

普段はなかなか聞けない貴重なお話でデザイナーの人柄も伝わったのではないでしょうか。
今回のLicht BestrebenのPOP UPに際し、オリジナルトートバッグを作成して頂いております。
※数量限定の為、無くなり次第終了となります。

徐々に気候も秋めいてきました。
みなさまのご来店を心よりお待ちいたしております。